
野球の肘を考えるとき、下半身にも注目したい理由 ―学生投手のトレーニングに関する研究から― 「球速を上げたい」「肘への負担も気になる」 。野球に取り組む学生や保護者の皆さんにとって、投球能力と体のケアは大切なテーマです。 2026年10月に…
野球の肘を考えるとき、下半身にも注目したい理由
―学生投手のトレーニングに関する研究から―
「球速を上げたい」「肘への負担も気になる」。野球に取り組む学生や保護者の皆さんにとって、投球能力と体のケアは大切なテーマです。
2026年10月にオンライン公開された研究では、思春期の野球投手を対象に、下半身のトレーニングが投球時の肘への負荷や球速に与える影響を調べています。
下半身のトレーニングで、何が変わった?
研究では、投手60人をチーム単位で3つのグループに分け、下肢のプライオメトリックトレーニング、バランストレーニング、対照群を6週間比較しました。
下肢のプライオメトリックトレーニングを行ったグループでは、投球時の肘への機械的負荷を表す指標「肘内反トルク」が約23%減少し、球速は平均4.2km/h上昇しました。バランストレーニング群でも球速は平均2.6km/h上昇しましたが、肘内反トルクに有意な変化は認められませんでした。
この結果は、下半身の力発揮や姿勢のコントロールに働きかけることが、投球能力や肘への負荷に関係する可能性を示しています。ただし、「野球肘の発症が23%減った」という研究ではありません。 実際のけがの予防効果や、痛みのある選手への治療効果は、この結果だけでは判断できません。研究原文
プライオメトリックトレーニングとは?
簡単にいうと、筋肉や腱の「伸びてから縮む働き」を利用して、素早く力を出す練習です。身近な例では、縄跳びや、軽くしゃがんですぐに跳び上がるジャンプが当てはまります。
下半身の筋力をつけるだけでなく、踏み込む・跳ぶといった動作で、その力を素早く発揮することを目指します。
具体的には、次のような運動があります。
縄跳びの両足跳び
両足で小さく跳び、着地から次のジャンプへリズムよくつなげます。高く跳ぶことより、姿勢とリズムを保つことを意識します。軽くしゃがんで垂直ジャンプ
立った姿勢から膝と股関節を軽く曲げ、すぐに上へ跳びます。初めは小さく跳び、着地するたびに姿勢を整えましょう。両足で前へジャンプ
軽くしゃがんで前方へ跳び、両足で着地します。最初は短い距離で、ふらつかずに着地できることを優先します。
これらはプライオメトリックトレーニングを理解するための一般的な例です。今回の研究で実施された具体的なメニューは未確認であり、同じ運動を再現したものではありません。参考:Harvard Health、フィラデルフィア小児病院の初級ジャンプ練習
最初は「安定して着地する」ことから
取り組むときは、ジャンプの高さや回数を増やす前に、着地の姿勢を確認しましょう。
膝と股関節を使って衝撃を受け止め、膝が内側に大きく入ったり、体が崩れたりしていないかを見ます。慣れるまでは連続ジャンプを急がず、一回ずつ着地を確かめることが大切です。参考:HSSの初心者向け解説
回数や難しさは、年齢、運動経験、普段の練習量に合わせて調整します。けがからの復帰中や、膝・足首などに痛みや腫れがある場合は、自己判断でジャンプ練習を追加せず、担当の医療者に相談してください。
肘の状態と、体全体の使い方を一緒に考えましょう
今回の研究は、投球について考える際に、肘や肩に加えて下半身にも目を向けるきっかけになります。一方で、「ジャンプをすれば肘の痛みが治る」「誰でも同じように球速が上がる」と受け取らないことも大切です。
PONOVA接骨院へ相談される際は、痛む場所だけでなく、投げるとき・投げた後の変化、普段の練習内容もお伝えください。肘に痛みがある場合は、痛みを我慢して投球や追加トレーニングを続けず、医療機関での評価につなげましょう。
参考文献:
Park HS, Yoon JH, Kim JY. Lower Extremity Plyometric Training Reduces Elbow Varus Torque and Increases Ball Velocity in Adolescent Baseball Pitchers. Journal of Science and Medicine in Sport. 2026年10月8日オンライン公開。
DOI:10.1016/j.jsams.2026.10.007
※本記事は論文の公開抄録・公開部分と、医療機関などの運動解説資料をもとに作成した一般向けのコラムです。論文全文の翻訳ではなく、運動例は研究結果とは区別して紹介しています。
